旅の感想が「よかった」しか出てこない
夏の終わりをしんみりと感じる間もなく、急に季節が進んだ感じがします。季節の変わり目、みなさま体調崩されたりしていないでしょうか? 今回の記事は、カメラマン&編集者の山崎が担当させていただきます。
旅が好きで、一年中どこかに出かけています。ところが最近、どうも印象に残らない旅が多くなった気がして……。「どうだった?」と聞かれても、「すごく綺麗だった!」とか、「よかったよ〜」とか、小学生の作文みたいな感想しか出てこないのです。

言語化能力が衰えてしまったのか、はたまた旅自体に新鮮さがなくなってしまったのか。ふと、昨年のイタリア旅は何が印象に残っているだろう……と振り返ってみました。
ミラノからヴェネチア、フィレンツェ、ローマに2泊ずつ。Airbnbで宿をとり、電車移動の旅。山田五郎さんの「オトナの美術講座」で美術史を勉強して、ワクワクしながら訪れたイタリアです。
ヴェネチアでは、橋の階段でスーツケースを持ち上げて渡らなければならず、荷物運びを商売にしている人がたくさん待ち構えていたこと。島へ行くフェリーから撮ったフィルム写真が、設定ミスですべてぶれていたこと。


スーパーで買った肉が、硬くて噛みきれなかったこと。
フィレンツェでは、タクシーの運転手が荒っぽくて、石畳を走るとガックンガックンしたこと。
ガイドブックに載っているマルシェは客引きが多く、注文の仕方がわからなくて硬いサンドイッチを食べたこと。でも郊外のマルシェのお惣菜は、パスタもソースも大当たり。おいしくなかったら嫌だなと控えめに買ったせいでだいぶ足りなかったこと。


ローマでは、3日間乗れる電車のチケットを、娘が買ったそばからなくし、それからひどく機嫌が悪くなったこと(娘が)。
さらに25年に一度の青年の祝祭と重なり、バチカン市国内に入れないばかりか、混雑に巻き込まれて地下鉄に乗れなかったこと。
代わりに使ったバスの車内で、日本好きのイタリア人から「バッグは前に持って、ここは日本と違って悪い人もいるから、気をつけて」と親切に教えてもらったこと。
そして宿泊したAirbnbの鍵は、どこも日本とはシステムとは違う二重ロックで、開け方に苦戦したこと。

もちろん、著名な観光地をはじめ、礼拝堂やお城にも行ったし、ゴンドラにも乗りました。それなのに、鮮明に残っているのは、ちょっとうまくいかなかったことばかり。
そうなんです。記憶に残るのは、予定どおりつつがなく進んだ旅よりも、予期せぬできごとがあった旅。
最近は、AIがうまくスケジュールを組んでくれて、SNSで評判を見てから現地に行くことがほとんど。事前に万全な準備ができることで、旅の失敗はずいぶんと少なくなりました。
でも、もしかしたら、その「失敗しないこと」が、旅の印象を薄めているのかも。
スムースにうまくいったことは、あとから振り返ってみても、語るべきことがあまりないけれど、うまくいかなかったことはいつまでも覚えているし、たくさんの気づきがあるものですよね。
と書いたところで、いまちょうど旅に出ているのですが、なんと娘がパスポートを忘れて渡航できず……。これもまた、忘れられない旅になりそうです。

